となりのしばふ

日々の記録と内省と

雑記220209

この度、自社HPを作ることになり(そもそもこのネット全盛期にHPなかったの?という話なのだが)、その中で流れる動画のナレーション担当になった。地元中学校での出張授業とか、役所の人に業務を紹介するとか、そういう声関係の仕事をポンと投げてよこされるのは、高校生から大学生の7年の間、子供向けイベントでMCのバイトをしていたことがバレているからだ。技術料ください。

高校から大学まで、短期も含めればいろんな業種のバイトをしてきた。うどん屋店員、割烹の給仕、荷物の仕分け等々。でも社会に出てから役に立っているなあと感じる経験の大半は、このMC業で得たものであることが多い。活舌など声の聞きやすさはもちろん、親しみを感じさせるようなトーンで話す訓練は社外折衝の場や電話対応で役立っているし、そういう技術面だけでなくチームで動く時の立ち回りかたや気の使い方なんかも現場作業の動き方に反映されているような気がする。大勢の人の前で話す度胸もついた。一般の会社に内定をもらってバイトを辞めるとき、「ナレーターとか声優とか役者とか、声に関わる仕事をやる気はないの?良い声なのにもったいないよ」と本気で引き留めてくれた人がいた。当時からそういう仕事は人気に左右される水商売という印象があり、堅実な収入が欲しかった私は「やっていけるはずがないよ」と笑って断ったのだけど、良い声と言われたことがうれしかった。あの人は今どこで何をしているのか。私は今でも普通の企業で働いていますが、褒めてもらった声は案外重宝されています。

 

米澤穂信「本と鍵の季節」読了。米澤穂信さんといえば「黒牢城」が第166回直木賞受賞作となった、今最高にアツい作家さん。受賞おめでとうございますの気持ちを込めて積読を消費。堀川と松倉、ふたりの男子高校生が日常の些細な事件に遭遇し、解決していく短編集。図書委員とはいえ本に関してこんなに博識な高校生が存在するか?というのはフィクションということで目を瞑って、堀川と松倉の掛け合いの軽妙さは米澤さんならでは。密室殺人や連続殺人のような重大事件を解決するような話ではないのだけど、事件の裏には緻密な仕掛けがあり、どれも納得できる仕上がりになっている。そして思春期真っ只中を生きる堀川と松倉は友人同士ではあるものの、その心中は明るい部分ばかりではない。特に松倉には誰にも吐露できない過去があって、それが物語全体に影を落としている感じ。相手の思惑があり自分の理想があり、そしてそれは交わらないから干渉することなく並んで歩く。ミステリーと、子どもが大人になる過程で経験するほろ苦さみたいなものが、ぎゅっと詰まった一冊。個人的には、友人の自殺に直面した若人の心情に深く踏み込んだ「ない本」、最後の最後で松倉の異質さがグサッと刺さる「金曜日に彼は何をしたか」の2編がおすすめ。

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