となりのしばふ

日々の記録と内省と

雑記230804

7月の終わりに、大学時代の友人3人と年一回の旅行に行ってきた。今年の行先は、加賀。はじめは京都まで足を延ばそうとしていたところ、1泊以上は全員の予定が合わないのと計画している暇がないのとで、今回は近場の北陸の古都巡りと相成った。ちょうど前日に梅雨明けが発表されたこともあり、旅の間は始終、快晴だった(ただし刺すような日差しだったけれど)。

上越妙高から北陸新幹線はくたかに乗り込み、金沢駅へ。旅の始まりに鼓門をバックに写真を撮影し、加賀温泉郷に足を向ける。今回の旅行はレンタカーを借りたのだけれど、加賀までは大きなバイパスでつながっていたので、迷わずほぼ道なりに行けた。雪が降る地域は特に、主要な都市につながる広域道路が整備されているってとても重要なことだと思う。途中、躙口から入る和モダンな食事処TILEで宝石みたいな薬味海鮮丼を食べたり、久谷セラミック・ラボラトリーで隈研吾氏の建築を見学して九谷焼のいろはを教えてもらったりして、ちょっと早めに山代温泉へ。

今年は予定をあんまり詰めずに、宿でゆっくりしようの回でもあったので、ちょっと奮発して露天風呂付きの部屋にしたのです。温泉街にあるのに、草木の斜面に位置しているからか森の中に建っているようなお宿は旅館のようなスパのような?かつリゾートっぽさもあって俗世に疲れた三十路たちには眩しかった。日本庭園のようなお庭、開放的な露天風呂、目にも美味しい旬の食材を使った食事。あと、お宿では季節柄ナイトプールのイベントをやっていて、音楽に合わせて点滅するイルミネーションに照らされながらプールサイドでアイスを食べたりもして、その非日常感が煩雑な日常を一日だけ忘れさせてくれた。部屋付きの露天風呂は朝風呂で入った。蝉が鳴き出す前の、けれどどこか前日の暑さが残る早朝、ぬるめのお湯につかりすだれ越しに青い紅葉を眺めたあの時間もゆったりした。今回、仕事が立て込んでいてパッキングするのも前日の深夜というような有様だったので、楽しみ4割・面倒さ6割という出発だったのだけれど、行って良かった。こんな風にリフレッシュするために人は旅行に行くのだなあ、とあらためて実感した旅だった。

お宿があまりに良かったためにチェックアウトが時間ギリギリになってしまって、2日目は駆け足のスタート。山代温泉から山中温泉に移動し、鶴仙渓へ。この時期、鶴仙渓では川床にお茶の席が設けられていて、渓流のすぐそばでおいしいお茶と甘味がいただける。お茶の入ったポットは清流で冷やされていて、川床に降りただけで汗だくになった体にはキンと冷えたおいしさがうれしかった。

私たちの旅行は、毎回ひとつは何か作ったり体験したりしようということになっている。旅の最後、今回選んだのは輪島塗の沈金体験。行ったのは輪島方面ではなく加賀方面なのだけど、石川という大枠では当てはまるので許すことにする。沈金とは漆器の表面をノミなどで削り、その溝に漆を接着剤として金箔を沈めて模様を描き出す加飾の技法です。体験施設ゆのくにの森の講師の職人さんがとても気さくな方で、箸か匙かで迷い、色で迷い、絵柄で迷いに迷い、そしてすべて決まったとて最初のひと削りがなかなかできない私たちに「はよやれ」と喝を入れ、完成まで導き、手早く金を入れて「なかなかいいじゃん」と褒めてくれた。私が緑の箸に彫ったつたない線でも、金が沈むと途端にそれっぽく見えるから不思議だ。金の定着期間は1~2週間で、そのあとは普通に使ってかまわないとのこと。今使ってる箸が10年選手で愛着があり、でも作った箸も素敵で変えようかどうか迷っている。会社のお弁当用の箸にしようかな。このゆのくにの森の散策が予想外に楽しくて、最後は後ろ髪を引かれながら慌ただしく駅に向かう。時間に追われて結局、お土産は金沢駅で買おうということになったものの、着いてみると考えることは皆同じなのか駅のお土産処は激混み。声を張り上げ次々とお客をさばいていくプロの店員さんに助けられて、無事に帰りの新幹線には間に合いました。今回、みんな仕事と私生活が忙しく計画段階でかなり難航したのだけど、十分リフレッシュできたし満足度の高い旅となりました。ありがとう友人たち。ありがとう加賀。いつか能登も巡りたいね。来年は、十数年ぶりのディズニーリゾートの予定。いくつになってもみんな好きよね。

さて今回の旅で心に残ったのは、九谷焼の美しさ。食器としての使われ方だけではなく、和室の装飾品になったり花器になったり、宿泊した部屋は襖の取っ手も九谷焼だった。伝統的な模様なのに、現代の様式の中で飾っても浮かずにぴったり当てはまる。あと九谷焼というと色鮮やかな絵付けがされたものというイメージがあったのだけれど、現代の作家さんの作品はむしろシンプルで、釉薬のみ、もしくは単色で仕上げているものも多く、実際に日々の食事のなかでも使いやすそうで認識を改めさせられた。けれど私はやっぱり絵付け皿に惹かれる。宿泊したお宿のいたるところに飾ってあった皿は、一点ものというよりは一般的に流通しているものらしく、お土産屋さんでも購入できるものだったため、気に入ったものを一枚だけ購入した。旅先のお宿や食事処で、その地域の焼き物が素敵に使われていると自分でも日常に取り入れてみたくなる。そうやって、統一性がないけれど思い出の詰まった器の集まる食卓で毎日食事をするのが、私の小さな野望です。