となりのしばふ

日々の記録と内省と

雑記2023.11

日記とするには些末な日常の連続で、それならその些末をまとめて更新しようかと思うなどして試験運用。

231103

3連休の初日、紅葉を見に行く。世間も連休に浮かれているのか高速にも県外ナンバーが目立つ。観光地最寄りの駐車場で隣の車が沼津ナンバーだったので「沼津!」と大声を出したところちょうどドライバーさんが戻ってきて「沼津です」と笑いかけられちょっと恥ずかしくもほっこりした。観光地に行くと全然知らない人と話す機会が多くなる現象、あると思う。自宅付近の木々はまだ青々としていて、目的地はいくら標高が高いとはいえ紅葉には早いのではないかと思っていたのだけれど、着いてみれば現地は晩秋。木々の葉はほぼ落ちて、あとは雪が降るのを待つばかり、といった様子に目を背けていた11月を感じた。行楽は天候に左右される。この日は一日中秋晴れで、枯れ葉散るなか枝にしがみついている紅葉も鮮やかに見えた。

231109

たしか社会人5年目だったと思うが、時代の流れに逆行するように喫煙者になった。きっかけは何だったのか忘れてしまったけれど、これから子どもを産む気もなく健康体で長生きする気もないからというのは当時から一貫していて考えていることで、一日3~5本をちまちまと吸い続けている。平日は決まって朝食後と帰宅後と就寝前に吸う。煙草はオンとオフの切替えで、それはスイッチのようにパチンと切り替わるのではなく、燃え尽きるまでの時間でゆっくりフェードインさせたりフェードアウトさせている感じが近いと思う。最近、寒くなってきたのでメンソールの入っているものから入っていないものに変えた。換気扇下のオレンジの照明の中、ゆるやかに溶ける煙は、秋から冬にかけての夜が一番きれいに見える。

231111

Ittala展に行く。フィンランドイッタラ村のガラス工場から始まったからIttalaであることも知らずにのこのこと見に行った素人にも、歴史やデザインの変遷がよくわかる良い展示だった。個人的にはIttalaというと、カイ・フランクのカルティオのようなシンプルかつスタンダードなイメージだったのだけど、デザイナーによって形質が全然違うし、それも全部Ittalaとして内包している。ところで、この展示でタピオ・ヴィルカラのウルティマ・ツーレ・シリーズがとても好きになってしまった。本当に自然の中で凍った氷でできているみたい。なんとなく、この人はこれを作るために自然の現象を研究したのではなく、すごく長い時間をあたりまえに自然の中で過ごしていて、水中で生まれた泡が水面ではじけるとか、冬に木々が凍って春に解けるとか、そういう自分の周りであたりまえに起こることをただただ実直に器にしたのだなあと感じた。

231115

背負わされている仕事の何個かのうちひとつが無事に終わったので、気が大きくなり缶チューハイを飲み、具合が悪くなって飲んだことを後悔した。いつも通りである。体質的に向いておらず、お酒が飲めない。200mlのビールでも気持ち悪くなり頭痛と筋肉痛のような症状が出て、縦になっていられなくなる。ところが故郷が清酒消費量全国1位、日本酒製造量全国3位という土地なので、飲み会が多く酒飲みも多く、酒が飲める人の地位が高い(と思っている)。毎日の晩酌に3リットルのビールを飲む上司と話していたら「酒が飲めない者は少量の酒で具合が悪くなるので楽しくなったり気持ちよくなったりしたことがない」という事情をまっったく把握していなかったので懇々と説明して差し上げたことがある。アレルギーには配慮されるのに、あの酒という劇物に関して全く配慮がされないのはなぜなのか。しかし私も20代の頃は飲み会の場で飲まないという選択ができず、飲んでいればだんだん耐性が付いてくるという俗説も手伝って、無理に杯を重ねたりN次会まで参加して目も当てられないことになったりもした。だけど私ももう若手というくくりにはおさまらない感じの年齢になった。これからは自分の身体のためにも、積極的に飲まないという宣言をしていきたいし、それが許容される世の中になってほしい。

231119

カンパーニュにハマっている。とあるカフェのカンパーニュの生ハムサンドに衝撃を受けたのがきっかけだった。「あのパン屋のカンパーニュがおいしい」と聞いて市外まで足を延ばすことも増えた。カンパーニュはバゲットと比べて酸味や粘り気がある。私はおやつのように食べるので、ドライフルーツやナッツの入っているのが好き。レーズンとクルミのようなスタンダードから、柿と梨とクリームチーズなんていう季節に合わせた変わり種もあって、飽きないのも良い。

231123

友人から佐渡においしいパン屋さんがあるらしいとの話を聞いた。検索してみると、外国人の旦那さんと日本人の奥さんのご夫婦がやっているパン屋さんで、ちょうどこの祝日に市内のカフェにポップアップストアを出すとのことで行ってみることにした。アップルパイが名物で、すぐに売り切れるらしいので予約をする。季節柄、シュトーレンも出品していたのでこちらも予約。他のパンも見たかったので開店10分前に到着するように出発したのだけど、まだ店舗が見えないうちから人、人、人の大行列。まさかこれパン屋の列?と疑いながらも最後尾に並び、すぐに漏れ聞こえてくる雑談からこれがパン屋の列で間違いないことを確信する。ざっと見積もって私の前に100人くらい並んでいる。今回のパン屋さんはまさに知る人ぞ知るという感じでメディア露出も少ない方だと思うのだけれど、皆さんアンテナの張り方が広い。どこで情報を得ているんだろう。早々に並ぶのに飽きてアーケードの中で遊び回る幼児たちを眺めながら待つこと2時間弱。ついに順番が回ってきた。店主のご夫婦が明るく気さくな方たちで、初めての私にも常連さんのように声をかけてくれてうれしくなった。クロワッサン、ベーグル、バナナケーキ、カンパーニュ、特設の棚に並べられたパンは全部食べてみたいけれど、胃には限界があるので限られた時間で迷いに迷う(ここでバナナケーキを断念したことをいまだに悔いている)。所用で来られなかった友人の分も含め、予約のアップルパイ、シュトーレン、その他の会計を済ませ、品物を受け取ったその時「重っ…」と小さく驚愕した。すごく重い。そもそもまずアップルパイの箱がでかいしシュトーレンもよく見るもののふた回りくらい大きい。そして帰宅後いそいそ開けたアップルパイ、見てくださいこの断面。中身みっしり。重いのも納得。シナモンの香り強めの中身は甘みがくどくなく、果物のりんごを食べる感覚で大きな1ピースもぺろりと食べられる。パイはしっとりふわふわ、半生シャリシャリのりんごとよく合う。このアップルパイ、アメリカナイズな大きさでものすごく繊細な味の構成をしているのです。皆さん、これをもう一度食べたくて、あのご夫婦に会いたくて、長い列に並ぶのだなあ。かわいい袋でラッピングされたシュトーレンはもったいなくてまだ開封するのをためらっている。12月になったら、最初の一切れをいただこう。人も街も浮足立つ最後のひと月が今年もまたやってくる。