となりのしばふ

日々の記録と内省と

雑記210929

角田光代対岸の彼女」読了。最近、女の生き方を問う話を読みがち。現代の小夜子と過去の葵の物語が交互に描かれる。過去の葵が現代の葵と被らず、過去のどんな出来事が葵を変えたのか、また現代の葵の心情は終盤になるまで描かれないことから、過去の葵と現代の葵は本当に同一人物なのかが気になってどんどん読み進んだ。子持ちの主婦だった小夜子と独身起業家の葵は立場は正反対であって、過去でも現代でも生き辛さを抱えているのは共通していて、最後にはこのふたりが共に一歩踏み出せたことが救いだった。誰も彼も関わろうとしなければ対岸、でも互いに歩み寄ることができれば岸と岸の間の川はなくなる。全編を通して特に好きだと思ったのは過去の葵の描写で、ナナコと交わす意味のない会話や一時の友情を永遠のものと信じ込む単純さ、集団に属せないことに対する不安、どこにも行けない閉塞感は過去に置いてきたものとして懐かしく感じた。